プログラム
セッション 1
11:35 - 講演1
大腿骨骨幹部骨折髄内釘挿入術後の骨癒合評価の検討と抜釘時骨強度評価
三又 秀行1, 4、松浦 佑介2、矢野 斉2、大鳥 精司2、東藤 貢3
1九州大学大学院 総合理⼯学府 物質理⼯学専攻、2千葉大学大学院 医学研究院 整形外科、3九州大学 応⽤⼒学研究所、4株式会社 計算力学研究センター
【はじめに】大腿骨骨幹部骨折髄内釘固定術において、骨形成の進み具合や抜釘判断の定量評価方法は確立されていない。仮骨も物性値換算式が導出され骨癒合過程での有限要素解析も可能となった。本研究では髄内釘固定術後の仮骨破壊リスクと抜釘時骨強度をCTベース有限要素解析を用いて定量化することを目的とした。
【方法】髄内釘固定術後のCTを用いてCTベース有限要素解析を行った。歩行中最大荷重時の関節反力、筋力を与えて解析し、骨折部仮骨の引張破壊リスク100%以上の体積比を引張破壊体積率として評価した。抜釘時骨強度解析では仮想的に髄内釘抜釘モデルを作成し、機能軸方向に強制変位を与えて解析し、変位-荷重曲線より骨強度を求めた。
【結果】引張破壊体積率は術後6ヶ月では11.6%となり破壊要素が外側に集中し、その後12、15ヶ月では2.6、0.5%と減少した。抜釘時骨強度は212、2670、3385Nと上昇し、15ヶ月時には健側の2766Nを超えており、近位部から破壊が生じるため抜去可能と推測された。
【考察】引張破壊体積率は仮骨形成が認められるレントゲン所見とも一致し、骨癒合の程度を定量的に評価できる可能性が示唆された。症例を増やし偽関節に至るカットオフ値を導出できれば、偽関節の早期判定、手術判断への応用が期待される。抜釘時骨強度では、健側比や生活強度等の基準を用い、抜釘時期判断を明確にできる可能性を示した。
11:50 - 講演2
大腿骨近位部骨折用骨接合デバイスのスクリュー固定位置の力学的評価
冨田 佳宏1、坂本 二郎2
1金沢大学 大学院自然科学研究科 機械科学専攻、2設計技術研究所
大腿骨近位部骨折用骨接合デバイスであるガンマネイルの挿入手術後におけるデバイス破損や再骨折を抑制することを目的に,生体力学解析を行い,デバイス先端,スクリューホールにかかる応力を求めて,デバイスのスクリューホール位置を検討した.MECHANICAL FINDER大腿骨モデルよりも低いヤング率を与えた.ガンマネイルは医療器具メーカーから提供されたスクリューホール位置が異なる13種類のデータを使用した.解析方法として体重50kgでの片足静止立位状態を仮定した.膝関節面を完全固定し,荷重方向はMFにおいて大腿骨の解析を行う際に推奨される立位における設定角度を使用した.境界条件として大腿骨とガンマネイルの境界面にクーロン摩擦を定義し,摩擦係数μ=0.3を設定した.以上の境界条件と接触条件を与えた大腿骨骨折接合モデルに対して線形弾性解析を行った.スクリューホールにおける最大ミーゼス応力はスクリューホール位置がネイル頂部から遠くなるにつれて増加する傾向がみられた.このことからスクリューホール位置がネイル頂部に近いほどネイル破損の可能性は抑制できるのではないかと考えた.
12:05 - 講演3
新鮮凍結屍体と有限要素解析を用いた大腿骨近位部骨折の力学的挙動に関する検討
矢野 斉、松浦 佑介
千葉大学大学院 医学研究院 整形外科
【目的】転倒により生じる大腿骨近位部骨折において、転倒方向と骨折型の関係を明らかにすることを目的として、新鮮凍結屍体を用いた力学試験と有限要素解析による検証を行った。
【方法】新鮮凍結屍体16体26肢(両側例10組20肢、片側例6肢)の大腿骨近位部を摘出し、両側例は左右の大腿骨を側方群と後側方群にランダムに振り分け、片側例は全て側方群と設定した。力学試験では大腿骨軸と地面が15°の角度をなすように大転子と大腿骨遠位部を固定し、各群で荷重方向を45°ずらして力学試験機で骨頭に荷重をかけることで側方への転倒と後側方への転倒を模擬し、生じる骨折が頚部骨折と転子部骨折のいずれであるのかを検証した。さらに、力学試験前に撮影したCTデータから3次元有限要素モデルを作成し、力学試験と同一条件で骨折を再現して有限要素解析の再現性についても検証した。
【結果】力学試験の結果、側方群16例の検証では頚部骨折が7例、転子部骨折が9例発生し、後側方群10例の検証では10例全てで転子部骨折が発生した。また有限要素解析と力学試験の骨折型の一致率は84.6%(22/26例)であった。
【考察】転倒によって生じる大腿骨近位部骨折では、側方への転倒よりも後側方への転倒で転子部骨折が多く発生する傾向がみられた。また本研究における有限要素解析の再現性については、骨折型の再現率が84.6%と良好な結果が得られた。
ランチョン プレゼンテーション
12:30 - 講演 4
Assessing Spinal Strength in Transplant Patients Using 2D and 3D Modeling Approaches
Kent D. Carlson1, Ejigayehu G. Abate2, Hillary W. Garner3, Daniel E. Wessell3, Dan Dragomir-Daescu1
1Department of Physiology and Biomedical Engineering, Mayo Clinic, Rochester, MN, USA, 2Division of Endocrinology, Mayo Clinic Florida, Jacksonville, FL, USA, 3Department of Radiology, Mayo Clinic Florida, Jacksonville, FL, USA
Bone mineral density (BMD) is used for assessment of bone health in the general population. However, BMD alone does not predict the risk of fracture in liver transplant patients. Prevalence of vertebral fracture is estimated to range from 13-56% in pre-transplant subjects with end stage liver disease. We developed a 2D FEA toolkit that uses BMD data from transplant patients to determine vertebral fracture strength of un-fractured vertebrae using compressive bone fracture simulations. We are using this 2D toolkit to estimate vertebral strength in transplant patients, to determine the tool’s ability to predict vertebral fractures. Since no experimental fracture strength data was available for this cohort, we compared the predictions from this 2D toolkit with 3D FEA compressive fracture models developed and simulated with Mechanical Finder. We did this for three patients in the cohort for which we had spinal CT data in addition to BMD scans. We created separate Mechanical Finder models using two different bone material property datasets, to compare these strength estimates with 2D results and with each other. Results from corresponding 2D and 3D simulations were compared. We found significant differences between the 2D and 3D results. These differences require further investigation, and mechanical testing of cadaveric vertebra is needed for model validation.
12:45 - 講演5
Computed Tomography-Based Finite Element Analysis for Assessing Skeletal Trauma
Mikoláš Jurda1、Luboš Řehounek2
1Department of Anthropology, Faculty of Science, Masaryk university, Bruno, Czech Republic, 2Department of Mechanics, Faculty of Civil Engineering, Czech Technical University in Prague, Prague, Czech Republic
Finite-element analysis (FEA) is a powerful tool for simulating structural stress analysis of objects based on their shape and defined physical characteristics. The presented study introduces an analysis of CT-derived FEA models for assessing the mechanism of sustained skeletal fractures.
The finite element analysis, represented here by algorithms incorporated in a Mechanical finder software, was employed to investigate a comminuted fracture of tibia as observed in naturally mummified remains of a 38-year-old man. The association between the trauma-inducing stress and the observed fracture pattern was investigated using an FEA model of the unimpaired right tibia. The mechanical properties were estimated in high resolution by the software based on a voxel density of CT scans. The performed dynamic simulations included low and high-velocity impacts of projectiles and metal splinters of various shapes and dynamic energy.
The performed analysis captured some of the general features of the observed fracture pattern. The outputs were in line with the assumption that the trauma resulted from a high-velocity blunt force impact. While the tools allowed for valuable case-specific simulations, more profound research should determine their robustness to changes in technical factors (e.g., voxel size, physical setup) and their applicability to diverse skeletal parts.
13:00 - 講演6
化石に残された内部構造はFEMに有用か?
松井 久美子1, 2
1Department of Paleobiology, National Museum of Natural History, Smithsonian Institution, DC, USA、2九州大学総合研究博物館
古生物学は化石を使用して過去の生物を明らかにする研究分野である。古生物学においてもこの15年、FEMを利用した研究が盛んに行われてきている。FEAの古生物学への導入によって、外見の観察や、形態の解析からだけでは明らかにすることのできなかった、咬合力の定量的な推定が可能になり、分類群を横断した咬合力の比較を行うことができるようになってきた。これにより、絶滅動物の古生態学的な役割の理解が飛躍的に進んだ。その一方で、現生動物骨を使用する解析とは異なり、絶滅種の解析には、化石ならではの難しさがある。生物が死亡の後化石として発見されるまでの間、地中に長い間埋没していることから多かれ少なかれ地中で圧力による変形を受けていおり、また、化石の内部が砂岩や泥岩などの堆積物で充填されている。そのため、骨内部構造や形態の把握が難しく、かなり単純化されたモデルでの解析に止まってきたという経緯がある。そこで、今回、化石のX線CT画像を用いて、食肉類を中心に、内部構造がよく保存された化石標本を抽出、産地や時代、内部の保存状態の異なる複数種類の標本から、均一モデル、不均質モデルの両方の手法を用いた解析を実施し、その結果について報告する。
セッション 2
座長: 松浦 佑介(千葉大学大学院 医学研究院 整形外科)
13:35 - 講演7
未固定遺体股関節を用いた寛骨臼関節面応力の検討 -有限素法と負荷試験との比較-
和田 佳三、玉置 康晃、後東 知宏、浜田 大輔、西良 浩一
徳島大学病院 整形外科
【目的】本研究の目的は寛骨臼関節面応力の評価方法として有限要素法と圧負荷試験の整合性を検討する事である。
【方法】変形性股関節症のない健常股関節を有する未固定遺体4体8対象とした。未固定遺体から左右の寛骨と大腿骨を股関節として摘出した。寛骨は腸骨部を石膏で台座に固定した。大腿骨遠位部から骨軸に沿って100Nの荷重をかけて、寛骨臼と大腿骨頭の間に挟んだ圧センサーで関節面圧を測定した。続いて寛骨臼を5度、10度後方に傾斜させて同様に荷重をかけて関節面圧を測定した。CT画像から有限要素モデルを作成して骨頭ならびに寛骨臼に軟骨モデルを追加して同一条件で有限要素解析を行い、寛骨臼関節面にかかる相当応力を測定した。
【結果】圧センサーによる圧力分布ならびに有限要素法による相当応力分布は、両手法ともに後方傾斜に伴って最高点が寛骨臼の前方に移動した。圧センサーによる関節面圧の平均値と有限要素法による相当応力の平均値の関連性をPearsonの相関係数を用いて評価すると、r=0.41で有意な正の相関が認められた。
【結語】圧センサーを用いた圧力評価は関節軟骨間の評価であり、CT画像に基づいた相当応力評価は軟骨下骨の評価であるため、両者の評価には隔たりがあることが予想されたが、正の相関が見られることが明らかとなった。本研究の結果から、有限要素法を用いた応力解析によって寛骨臼関節面圧を予想できる可能性が示唆された。
13:50 - 講演8
3Dポーラスカップを使用した人工股関節置換術におけるマイクロモーションの有限要素法解析
宮川 貴樹、秋山 治彦
岐阜大学 整形外科
【背景】3Dポーラスチタンカップはmicromotion(MM)の抑制により良好な生物学的固定をもたらすとされている。しかし,臨床報告では骨・コンポーネント間のfibrous fixationのために生じるとされるRadiolucent line(RL)が高率に発生した報告が散見された。
【対象と方法】3Dポーラスチタンカップ SQRUM TT(京セラ社)を使用して人工股関節置換術を受けた73股関節について調査した。DeLee and Charnley(1976)のZone分類によりRLの評価を行った。有限要素法解析はMECHANICAL FINDER version 11.0を使用して,片脚立位を想定した荷重条件で解析を行った。カップポーラス部・骨界面は摩擦係数1.02の接触条件とした。
【結果】Radiolucent line(RL)が26例で観察され、22例がDeLee Charnley Zone 3に出現していた。FEAではZone 3でZone 1,2と比較して有意にMMが大きく、RLが出現した群では出現しなかった群と比較して有意にMMが大きかった。
【結論】有限要素法解析によるMM解析は,RL出現が予測可能であることを示した。この研究に基づいたインプラント改良は,より長期的な臨床成績の向上につながる可能性がある。
14:05 - 講演9
⾼精度セグメンテーション⼿法を⽤いた⾻のイメージベース有限要素解析の精度検証
薬師神 翔⾺1、⽥原 ⼤輔2、⼩野 景⼦3、⼭川 蒼平4
1⿓⾕⼤学 ⼤学院理⼯学研究科 機械システム⼯学専攻、2⿓⾕⼤学 先端理⼯学部 機械⼯学・ロボティクス課程、3同志社⼤学 理⼯学部 インテリジェント情報⼯学科、4同志社⼤学 ⼤学院理⼯学研究科 情報⼯学専攻
【目的】Mechanical FinderにおけるCT画像上の骨の関心領域抽出(セグメンテーション)は半自動で可能だが,微調整に多くの手動操作と時間を要するため,解消が望まれる.これに対し,著者らは画像特徴量や深層学習を用いた高精度な画像セグメンテーション手法を開発しており,これを用いた解析結果の妥当性の検証が必要である.本研究では,開発手法の妥当性評価を目的として,椎体模擬骨を対象に,開発手法により骨領域を抽出したCT画像に基づく有限要素解析を行った.また,既存手法による解析,圧縮試験との比較を行った.
【方法】圧縮試験では,椎体模擬骨の上下面を石膏で補填後,アクリル板で固定した試験片に対し,100
Nの圧縮荷重を負荷し,椎体側面の複数点の圧縮主ひずみを測定した.解析では,圧縮試験前の試験片をCT撮影し,開発/既存手法のそれぞれによりセグメンテーションして構築したモデルを要素長1.26
mmで作成し,圧縮試験と同様の荷重・拘束条件を付与した.
【結果と考察】各セグメンテーション手法を用いた有限要素解析から得られた圧縮主ひずみの傾向は測定点間で類似した.既存手法と同等の結果が得られる開発手法は,効率的な解析時間削減の点で有用である.また,開発手法による解析結果は圧縮試験結果とも近い傾向が得られたが,現状,両手法ともに圧縮試験結果との差が大きかったため,実験と解析の条件を再検討中である.
14:20 - 講演10
脊髄髄内腫瘍摘出後のチタン製バスケットプレートを用いた頸椎椎弓形成術に対する有限要素解析
内藤 堅太郎1、高見 俊宏2
1大阪市立大学 脳神経外科、2大阪医科薬科大学 脳神経外科
【はじめに】有限要素法(FEM)を用いた構造解析は医療分野における有用性が示唆されている。本研究では、チタン製バスケットプレート(TB)を用いたLift-up式頚椎椎弓形成術について、FEM解析と手術症例におけるインプラントおよび骨安定性を検証した。
【方法】CT画像を元に、➀片開き式+TB、②Lift-up式+TB、③Lift-up式+ハイドロキシアパタイトスペーサー(HA)、の3種類の有限要素モデルを作成した。棘突起に対する3方向からの加重下での相当応力と変位量を解析した。また、頸髄髄内腫瘍摘出術後の椎弓形成30例(平均2.4椎弓形成)におけるインプラント逸脱率および骨安定性を判定した。
【結果】相当応力は、HAモデルではスペーサーを固定しているチタンミニプレートへ集中したが、TBモデルではインプラント全体に分散しており、突起変位量はTBモデルで有意に小さかった。再手術を要するインプラン逸脱は認めず、術前後の頸椎アライメントに有意な変化はなかった。
【結語】TBを用いた椎弓形成では、インプラント初期安定性と骨安定性に有用であると考えられた。
セッション 3
座長: 田原 大輔(⿓⾕⼤学 先端理⼯学部 機械⼯学・ロボティクス課程)
14:55 - 講演11
デノスマブが椎弓根スクリューの固定性におよぼす影響-有限要素解析を用いた2年間の前向き研究-
谷 聡二、石川 紘司、工藤 理史、豊根 知明
昭和大学 医学部 整形外科学講座
【目的】
骨粗鬆症患者における脊椎固定術は増加しており、周術期のインプラント関連合併症を回避するために骨粗鬆症治療は必須である。デノスマブは骨粗鬆症に対して良好な治療成績が報告されているが、椎弓根スクリュー(Pedicle screw; PS)の固定性に及ぼす影響は報告されていない。本研究の目的は、デノスマブがPS固定性に及ぼす影響について、CT有限要素法を用いて検討することである。
【方法】
対象は閉経後骨粗鬆症に対して加療予定の患者21名である。デノスマブ投与時・12ヶ月・24ヶ月で骨密度(DXAおよびQCT)・CT有限要素法による強度評価(PS 引き抜き強度および椎体圧縮強度)を測定した。また、骨密度および有限要素解析による強度の関係についても検討した。
【結果】
骨密度はデノスマブ投与によりいずれの評価方法においても有意に増加していた。有限要素解析によるPS引き抜き強度および椎体圧縮強度は、デノスマブ投与により12ヶ月および24ヶ月で有意に増加していた。有限要素解析はDXAによる骨密度評価よりもQCTによるものにより高い相関関係を示した。また、PS引き抜き強度はPS周囲骨密度と高い相関関係を示し、椎体圧縮強度は椎体中央の骨密度とより高い相関関係を示した。PS周囲骨密度は皮質骨領域での上昇が大きかった。
【考察】
デノスマブは脊椎手術において、有用に活用される可能性がある。
15:10 - 講演12
椎体圧縮強度と強い相関を示す構造・骨密度パラメータの探索
東藤 貢1、呉 順2、梅林 大督3、山本 優4
1九州大学 応用力学研究所、2九州大学大学院 総合理工学府、3京都府立医科大学 脳神経外科、4稲沢市民病院 脳神経外科
MECHANICAL FINDER CLINICを利用することで単独椎体の圧縮強度を評価することができ、かつては臨床応用も進められていた。ひとりの骨粗鬆症患者において、各椎体の強度が明らかになれば、より高精度でその患者に対する椎体骨折の危険性を予測することが可能となり、臨床的意義は大きい。一方、CLINICの利用方法は比較的単純であるが、患者のCTデータから直ちに強度データが得られる訳ではない。そこで本研究では、椎体の構造や骨密度に関連するいくつかのパラメータを選択し、それらと骨強度との相関について調査した。その結果、骨強度と強い相関を示すパラメータを見出すことに成功した。
15:25 - 講演13
脊椎手術の定量化
神経根減圧脊椎低侵襲内視鏡手術のための有限要素法
北浜 義博1、三宅 秀明2、山本 祐太朗3、小泉 慎一郎3、黒住 和彦3、静 弘生4、酒井 克彦4、原 直樹5
1すずかけセントラル病院 脊椎センター、2浜松医科大学 光医工学大学院、3浜松医科大学 脳神経外科、4静岡大学 工学部機械工学科、5計算力学研究センター
有限要素法(Finite element method: FEM)は、整形外科分野でセラミック素材類似構造としての骨構造の負荷分析やチタン製の固定器具の負荷予測解析に主に使用されてきた。手術の目的である神経の除圧効果を分析した研究は少ない。
方法:FEMの分析ツールとして計算力学研究センターのMechanicalFinder®を選択した。3Dモデルは、完全内視鏡下脊椎手術(Full endoscopic spine surgery: FESS)で神経根の除圧を実施した症例の術前と術後の検査のDICOMデータに基づいて個別に再構築した。画像は、東芝Aquillion64を使用して0.5mmのスライス幅で取得した。腰椎モデルは、3次元要素としての硬膜管、椎間板、黄色靭帯、椎間関節軟骨、および前縦靭帯の近くの第2から第4腰椎で、横靭帯、棘上靭帯、および棘間靭帯を含んだ。硬膜管と椎間板は均質な内部構造として扱った。荷重条件と拘束条件は、立位での荷重を想定した。第4腰椎の下面を拘束し、第2腰椎の上面に1,000Nを垂直に負荷した。モデル範囲の硬膜管の上端と下端は拘束した。頚椎モデルは、3次元要素として第4から第7頸椎、近くの硬膜管、椎間板、黄色靭帯、椎間関節軟骨、および前縦靭帯とした。硬膜管と椎間板は均質な内部構造として扱った。荷重条件と拘束条件は、7番目の頸椎の下面、硬膜管の下端
15:40 - 講演14
犬の胸腰椎におけるFEMの有用性に関する検討
菊地 勇輝1、原 康2
1日本獣医生命科学大学 獣医外科学研究室、2日本獣医生命科学大学
ヒト医療では、幅広い部位におけるFEMの有用性が示されているが、獣医療ではまだ十分に検討がなされていない。そこで今回、我々は、死体犬のCT検査データから作成した脊椎モデルと、実際に力学試験を実施した脊椎の挙動に関して、相関性が認められるかを調査した。L1-2椎体モデル、およびL5-6椎体モデルを各6検体作成し、L1-2椎体では回旋試験、L5-6椎体では圧縮試験を実施した。その結果、いずれの試験においても、FEMと実際の力学試験の相関性が示された。
セッション 4
座長: 坂本 二郎(金沢大学 設計製造技術研究所)
16:15 - 講演15
Bristow変法における至適烏口突起長:3次元有限要素法による検討
佐野 博高
仙台市立病院 整形外科
【目的】Bristow変法において、移行する烏口突起の至適な長さを明らかにすること。
【方法】健常肩関節モデルにおいて、肩甲骨関節窩前方に最大横径の25%の骨欠損を作成し、4時30分方向に5、10、15、20mmの長さの烏口突起を移行した。スクリューヘッドに400Nの圧迫荷重を段階的にかけ、烏口突起内で要素破壊が起こり始める荷重値を記録した。次に、肩下垂位および90度外転位で、上腕骨大結節に関節窩中央に向けて50Nの圧迫荷重を、烏口突起先端に共同腱の走向に沿った20Nの引っ張り荷重をかけ、弾性解析を行った。肩甲骨内部でスクリュー周囲に10×10×30mmの直方体を設置し、内部の平均相当応力値をモデル間で比較した。
【結果】スクリューヘッドに圧迫荷重を加えていくと、烏口突起長5 mmでは252 N、10 mmでは370 N、15 mmでは377 N、20mmでは331 Nの荷重を加えた時点で要素破壊が発生し始めた。一方、スクリュー周囲の骨内平均相当応力値は、移行する烏口突起が長くなるほど上昇する傾向が認められた。
【結論】烏口突起長を5 mmにした場合、スクリューを強く締めると骨片が割れる危険性が高くなる。一方、移行する烏口突起が長いほど肩甲骨内で緩みが生じる可能性が高くなる。以上から、Bristow変法において移行する烏口突起の長さは、10mmが最も適当と考えられた。
16:30 - 講演16
有限要素解析を用いた頬骨骨折の最適治療の検討
石田 麻佐絵1、三又 秀行2、二ノ宮 邦稔1
1東京慈恵第三病院 形成外科、2株式会社 計算力学研究センター
【背景と目的】頬骨骨折は顔面骨骨折の中で頻度が高く、その治療法は観血的整復固定術が一般的である。頬骨tripod骨折では3点固定が標準治療とされるが、低侵襲でかつ有用な最適治療方法を選択するには、より少ない固定点で十分な固定力が得られる為の力学的検証が必要である。実験的解析が困難な顔面骨に対してCTデータを抽出したモデルを有限要素解析し、固定条件の異なるモデルで転位量、応力分布を比較検討した。【方法】解析ソフトにMECHANICAL FINDER version 11を用いて材料線形解析、接触解析を行った。CTデータは1mmスライス、0.5mmピクセル間隔とした。健常な31歳男性のCTより顔面骨モデルを作成し、年齢相当の筋骨格条件を設定した。解析方法:健常成人男性の顔面骨CTデータから作成した骨折モデルに対して、プレートの種類や固定数、固定部位の異なるモデルで日常生活動作を想定した最大咬合時の応力分布を比較した。【結果】プレートの種類や固定数、固定部位で固定力が異なる可能性が示唆された。【考察】有限要素解析で頬骨骨折の治療方法を検討した。個々のCTデータより得られた骨折モデルを解析することで安全でかつ有用な最適治療が可能となると考えられる。
16:45 - 講演17
Stress Distributions at the Peri-Implant Area for Transgingival and Subgingival Dental Implants
Luboš Řehounek
Department of Mechanics, Faculty of Civil Engineering, Czech Technical University in Prague, Prague, Czech Republic
The presented research focuses on determining the stress distribution at the peri-implant area around dental mplants. A numerical analysis simulating the conditions of chewing food has been performed on a FEM model. This model has been created using anonymized real patient CT data and a dental implant model developed at CTU. The CT data served as a 3D geometry and also as a way to construct the global matrix of stiffness of the bone material. Bone density was used as the defining parameter in determining the values of Young’s moduli of individual finite elements by the computational program Mechanical Finder. The implant was introduced as a user-created STL file, which was imported to the computational software and situated inside the geometry of the human mandible. The results show that, as predicted, porous implants achieve higher values of minimum principal stress in the bone as opposed to homogeneous implants (13.4 MPa vs. 7.0 MPa), thus leading to a potential reduction in stress shielding. This research is only comparative but corroborates the hypothesis of porous implants transferring more stress into the bone at the peri-implant area.
17:00 - 講演18
Preiser Diseaseに対するClosed wedge Osteotomyの適切な骨切り角度の検討
松浦 佑介
千葉大学大学院医学研究院